なめられてる?

今までに1600組以上の飼い主さん&愛犬に出会ってきましたが、なかにはたまに(割と?)「なぜこの飼い主さんにこの犬種なのかな……」と思う組み合わせがあります(笑)。

『ポンテ』は、とにかく明るくて元気な子犬でした。会いに行くととても喜んでくれて、興奮して部屋を走り回っていました。ここのお宅のトイプードル、本当にすばやいです!お顔なんて、ゆっくり見ることができません。飼い主さんは一生懸命捕まえようとしてくれましたが、捕
まらないと思います(苦笑)。

ポンテのほうはと言うと、たまにわざと飼い主さんにアタックして「ちょい噛み」しているようで、そのたびに飼い主さんは「痛いっ」と言っています。「待ちなさい!」と叫んではみるものの、伝わっているはずもなく……。だったら言わないほうがいいのになあ、などと思いながら観察していましたが、この様子では埒があかなそうだったので、私が捕まえることにしました。

走り回る犬を捕まえるときは、自分はまずできるだけ動かないで、相手(犬)の動きのパターンを読むことが大切です。じっと立って目で追っていると、次にどこに行こうとしているのかが見えてきます。動きが見えたときに、相手の行く手を数回ふさぐことができれば、観念する場合もあります。つまり、逃げずに「自ら止まって捕まってくれる」のです。

と、簡単に書きましたが、これには少々熟練の技が必要かと思います。後は、その人の資質でしょうか。私は、学生のころに卓球をやっていたのですが、それで培われた小さな玉の動きを見る力と、すばやく瞬間的に動く力が役に立っているのかもしれません(って、すごーく昔のことですが……)。

そんなこんなで、ポンテは無事に私の腕の中に収まりました。キョトンとした様子で、「何で捕まっちゃったのかな?」と思っているようにも見えました。そして、飼い主さんもキョトン。「あんなに速いの、どうして捕まえられるんですか~?」と不思議がります。

飼い主さんは、ちょっとぽっちやりめで落ち着いた感じの、穏やかな笑顔がすてきな飼い主さんでした。

抱きかかえたポンテを飼い主さんにお渡ししようとすると、私の腕の中で暴れ始めました。ここで少々教育的指導。私は、腕に適度な力を入れ、ポンテに自分の力強さが伝わるようにして顔をポンテの顔に近づけ、低い声でひと言「ヴ~」とうなりました。このときの力は、強すぎると子犬を怖がらせてしまい、弱すぎると子犬が自由にできると思って余計に暴れるので注意が必要です。

ポンテはブリーダーさんのところから来たので、ちゃんと親犬やきょうだい犬たちと過ごした経験があると見られ、このうなり声にはよく反応してくれました。まさに「ハッ」として私のほうを見上げたので、その後すぐに少し高めの声で「おりこうさん~」とほめてやりました。

このときになでてほめる人がいますが、なでられるのが嫌いな場合には罰になってしまうので、注意してください。とくに初対面の場合には、やさしい声をかけつつ、2~3回そっとなでるくらいがちょうどいいかと思います。

 

トイレは「飼い主がうまく教えられない」場合がほとんど

私は日中仕事のために出かけることが多いので、エリのトイレトレーニングにおいては、朝いちばんの排泄が、確実かつ非常に大事な学習のチャンスでした。

初日の朝、私が起きる気配を感じたのかエリも起きたようでした。私はパジャマのまま、何よりも先にまずエリをグレートから出して、トイレスペースに連れて行きます。中で排泄させてしまって、学習のチャンスを逃したくなかったからです。

わが家の犬用トイレは、ペットシーツを敷いた床の三方を囲ったスペース。エリは目が見えないため、ハウスから出たらすぐに鼻先におやつを近づけ、それを追わせるようにしてトイレのスペースに誘導します。シートの上に乗ったら、出られないようにもう1枚のワイヤーパネルで閉じました。

先輩犬たちのおしっこの臭いがついていることもあり、エリが膀胱にたまったおしっこを出してくれるのにそれほど時間はかかりませんでした。排泄が終わったら、「おりこう~」などと高めのトーンでよくほめて、できるだけ早くおやつを口の中に入れてやります。

食事を与えた後は、うんちのタイミングが来やすいので、今度はそこを見計らいます。

同じようにトイレに誘導し、排便したらよくほめておやつを口に入れてやります。その後は仕事へ出てしまうことが多いので、朝の排便は、私がエリにトイレを教える大事なチャンスということになります。

次の朝も同じように誘導し、成功させてよくほめ、できるだけ早くチーズなどの「ちょっといいもの」を口の中に入れてやりました。

その次の日も同じようにして、4日目の朝を迎えました。

グレートの扉を開けると、エリ自らトイレへ行こうとする様子が見られたので、「シーシー」と声だけかけて見守っていると、何と自分でトイレに入り、おしっこをしてくれたのです。トイレトレーニングを開始してから4日目で、学習が始まりました。

もちろん、4日目からずっと成功するわけではなく、たまに失敗しては、また上手にできたりといった一進一退を繰り返し、だんだん確実にできるようになっていきました。

かなり高い確率でトイレに行けるようになったころ、寒くなってきたこともあって、エリのグレートを寝室へ移しました。トイレまでの距離は今までの3倍ですが、数回おやつでトイレヘ誘導してやると、それからは自分で行けるようになりました。

そしてエリと付き合い始めてから5ヵ月ほど経ったある日(エリ生後9ヵ月)、知人宅へ連れて行くことになりました。さすがに心配だったのでマナーベルトを着けて、まず最初に、そこの家の犬用トイレヘ誘導して排泄を促しました。するとマナーベルトを着けたままでしたが、ほかの犬の臭いに刺激されたからか、割と素直におしっこをしてくれたので、よくほめておやつを与えました。

その後、エリが部屋の中をうろうろするたびにそっと見守っていましたが、今度は自らトイレに入っておしっこをしてくれたのです。このときもよくほめておやつを与え、すぐにベルトを取り換えてやりました。

それから1ヵ月後、今度は実家へ連れて行きました。初めて行く場所なので一応マナーベルトを持って行きましたが、自分の実家ですし、犬も飼っているので、最初は着けずにトイレに誘導してみました。すると実家の犬の臭いがついていることもあり、すぐにおしっこをしてくれたのです。ほめておやつを与えると、それからはちゃんと自分でトイレに行ってしてくれました。愛犬を信じることができなかった飼い主が持って行ったマナーベルトは、使われずに持ち帰られることとなったのです(笑)。

「愛犬がトイレをなかなか覚えてくれない」と悩む飼い主さんは多いです。しかしそれは、本当に「犬がなかなか覚えない」のでしょうか?「飼い主がうまく教えられない」場合がほとんどではないでしょうか。

うまく教えられないのには、「飼い主さんが排泄のタイミングを見ていられない」、「ほめるタイミングが悪い・遅い」、「おやつを与えるのが遅い」、「おやつの魅力が低い」などの原因が考えられると思います。仕事をしているから日中は見ていられない、というのは飼い主さん側の都合であり、それでトイレを覚えない犬のせいにすべきではありません。

朝の1回だけでもいいから、上手に誘導してうまくほめてあげられたら、エリのように目が見えなくても4日で覚えてくれることがあるほどです。

ご自分のトイレの教え方が、愛犬にとってわかりやすいのかどうか、ぜひ見直してみてください。

 

トイレトレーニングのやり方

全盲のトイプードルの『エリ』の里親になったとき、見えないことによって私から伝えにくいことがたくさんあるので、いろいろな生活のルールを教えていくのは時間がかかるだろうと思っていました。

しかしエリは、手元に来てくれた日から今日まで、そんなこちらの不安を吹き飛ばし、さらにさまざまな感動を私に与え続けてくれています。

子犬を迎えたときに、飼い主さんがまず悩み、頭を抱えることになることが多いのがトイレのしつけです。ゲージの中でさえできなかったり、ゲージの中では上手にできてもゲージの外に出すとできない、といったケースはかなり多いです。

エリのトイレトレーニングですが、ほかの子犬に教えたのと同じ方法で、まずグレートをトイレから1mほど離れたところに置きました。ほかの犬は寝室で私と一緒に寝ているのですが、そこからトイレまでは距離があります。エリのグレートだけリビングルームのワークデスクのそばに置き、そこで寝てもらうことになりました。初日だし寂しがって夜鳴きをするかも、という心配も杞憂に終わり、グレートの中で糞尿にまみれることもなく、無事さわやかな朝を迎えることができました。

糞尿にまみれることがないということは、グレート内で排泄しないわけではありません。グレート内には大きめのマットを入れてあったので、もしおしつこで濡れたとしてもそこを避けて寝ていたり、うんちをしたらマットに包んで端に追いやったりしていたということです。わが家では、犬たちが排泄したときに体が濡れたり汚れたりしにくいよう、グレート内にスチール製のすのこを入れています。

新潟県中越地震の際に、避難所でグレートに入れられっぱなしになった犬たちの多くが、膀胱炎を患ったという話を聞きました。もともと外飼いの犬たちが多く、グレート内では排泄したくなかったために我慢しすぎてしまったようです。

わが家の犬たちは、子犬のころからグレートで過ごすことも多く、夜寝るときは扉を閉められます。子犬のころはおしっこを長時間我慢することができないので、中で漏らすこともありますが、それを叱ることはしません。

この経験が、ある程度我慢したとしても、辛くなったらグレートの中で排泄することへの抵抗を少なくしているのかもしれません。

成犬たちは7~8時間くらいの通常の外出では排泄していませんが、それよりも長い時間、留守番でグレートに入っていなければならないようなときはグレートの中で排泄していることがあります。片付ける手間はかかりますが、飼い主としてはぎりぎりまで我慢されるより、そのほうが安心です。

トイレトレーニングは、とにかく成功させておやつを与えることが肝心だと思います。

早く覚えさせたい場合には、犬がとても喜ぶようなとっておきのおやつを使うとよいでしょう。トイレのタイミングは、寝起き、食後、運動後などが多いので、できるだけ注意して見ておいて、成功したらほめておやつを与えるようにしてください。どの学習でもそうですが、ほめられる回数が多いほど早く進むものです。